午後をまるごと潰して、91APP-iCHEF のデバッグをしてやった
5/12 追記:
この件をケースに、ビジネス・インサイトをひとつまとめた:http://case.4force.com.tw
興味ある? こっちはいまも金を垂れ流している。AOV suppression case(客単価抑制ケース)とは何か。これがそうだ。どうも。
2026年5月10日、Uber 経由のコア顧客のひとり、うちの店で18回注文してくれている人が、Uber Eats に星五つのレビューを残した。
「お肉がチェックボックス式なので、2人前以上追加できません。改善をお願いします」
星五つ。それでも彼女は星五つをくれたのだ。そこで私はシステムを調べた。
問題は単純だ。うちは火鍋のデリバリーブランドで、iCHEF の POS を Uber Eats と foodpanda に連携させている。火鍋の追加注文の肝は、同じ肉を何皿でも頼めることにある。豚肉×2、牛肉×1、というように。飲食業界では Quantity in Modifiers と呼ばれる仕組みで、目新しい機能でもなんでもない。
現状:
- foodpanda:正常
- Uber Eats:同じ品目は1つしか選べない(単一選択のボックス)
午後いっぱいかけて、自分で再現してみた:
- Uber Eats の管理画面で複数選択を手動でオンにする → 注文画面は正常
- iCHEF の管理画面で同期(publish)を実行する → Uber Eats 側が単一選択に強制的に上書きされる
一連の操作は、ノーカットで全部録画してある。
これは大バグではない。初歩的な大ポカだ
クラッシュや強制終了は、エンジニアリングの事故だ。これは、プロダクトに対する認識の事故である。
Uber Eats の管理画面はこの機能をネイティブでサポートしていて、API も開いている。つまり、可能性は三つしかない:
- BD が話をつけていない:ビジネス連携の交渉力に問題がある
- 開発(RD)が実装していない:プロダクトの優先順位が長年ずれたまま
- サポートが放置している:問題が来ると、まず客の頭の中の「認識」を正しにかかり、問題の本質を見ない。
しかも foodpanda では動いている。ロジック層はすでにあるということだ。Uber 側がつながっていないのは、技術の問題ではない。
サポートの SOP は、この機械の縮図だ
今日、iCHEF のサポートと2時間近くやり合った。担当者はひたすら「単一選択に設定すれば、単一選択で同期されます」と説明し続けた。それは正しい。だが、私が訊いたことではない。
私が訊いたのは、複数選択に設定したのに、なぜ同期すると単一選択になるのか、だ。
この二つの文は、同じ文ではない。
サポートの SOP が彼女に叩き込んでいるのは「仕様を説明すること」であって、「客の問題を理解し、しかるべき層へエスカレーションすること」ではない。つまりこの会社のサービス設計の核は、自分たちがミスをしないよう身を守ることであって、店の問題を解決することではない。
結局、私が自分で完全なインシデントレポートをまとめ、口元まで運んでやって、ようやくエンジニアに回してもらえた。
それから、91APP の IR ページを見に行った
「AI 技術とインサイト分析を基盤となる能力とし、オンラインとオフラインを横断するオムニチャネル・ソリューションを提供する」
火鍋屋で肉を追加するための quantity modifier ひとつが、客のレビューでようやく発覚する。
91APP が iCHEF を買収したとき、市場が期待したのは統合によるアップグレードだった。いま見えているのは、大企業のプライオリティの狂いが、きれいな IR の文言で包装されている姿だ。
iCHEF の顧客は万単位の店舗に及ぶ。影響を受けるのは、「同じ品目を複数追加する」必要がある業態すべてだ。火鍋、焼肉、ドリンクスタンド。影響は何千店に及ぶのか。わからない。だが、客単価(AOV)を落とされた店が必ずあることはわかる。少なくとも私には、自分の店の数字がある。それに、あの星五つの常連客が好意で残してくれたスクリーンショットも。
「これが 91APP の過去2年の株価推移だ。」
これが検証動画だ
https://www.youtube.com/watch?v=hqcIungClbg
もし iCHEF の月額料金の引き落とし機能が72時間止まったら、彼らは「穏便に済ませる」だろうか。全社に明かりが灯ったまま、直るまで総出で徹夜するに決まっている。
ところが、店の売上を生む機能が壊れても、サポートに延々と堂々巡りの相手をさせておける。
エンジニア諸君に提言する:
Uber に payload を送ったあと、送信した値と iCHEF 管理画面の設定値が一致しているかを突き合わせる監視レイヤー、つまり diff check を、なぜ置いていない?
注文の特徴を監視するのが、そんなに難しいか? 複数追加の注記がついた注文の比率が0%になったら、アラートが自動で PM に飛ぶようにしていないのか?
これは技術の問題ではない。誰の金のほうが大事だと思っているか、の問題だ。
本稿の初出は方格子(Vocus)、2026.05.10。